糖尿病について

 糖尿病については、現代医学の病名ですからその定義はweb上で容易に検索できますし、普段より社会保険的啓蒙がされていますので、国民的知識が相当定着しているものと存じます。ここでは、漢方などの伝統医学で説かれる該病に対する理解が、病の本質に迫るものがあると思うので、ここに紹介したいと思います。
 漢方では糖尿病をより広範囲に、兆候から終末までを、原因と病理、予後と治療、予防とケアにいたるまで、人体の生理病理に対する深い洞察から対応していきます。科学技術の高度に進んだ現代にあって、知らない人にとってはまさかと思うかもしれませんが、まさに二千年の経験と知恵がこの病の本質をすでに解明しています。
 今日いうところの糖尿病は伝統医学でいう古病名の『消渇(ショウカチと読みます)』に含まれます。消は消耗の消、渇は文字通り渇きです。喉が渇いて盛んに水を欲しがり、たらふく食べてよく汗をかき、体を動かすことが苦手で、はじめのうちは太っていたのにやがて痩せてゆき、終盤は末梢循環不全から様々な病症を併発する・・・。糖尿病というとインシュリンの欠乏等による糖代謝不全より多様な病相を呈する疾患に限定されがちですが、消渇といえば、インシュリンの欠乏ないしは機能障害は結果の一つに過ぎず、病の全体を気血陰陽の平衡失調として捉えなおす見地を獲得することになります。
 前置きが長くなりました。早速本論に移ります。
 古来、消渇の発生原因は五臓虚弱の基礎の上に、飲食不節と情志失調があると考えられてきました。「美食に耽ると肥満になる。肥えた者は内に熱を持ちやすい。甘く旨味の濃い食べ物ばかりを求めていると胃腸に熱を持ち気が滞り、上逆して消渇を引き起こす」「怒れば気が上逆し、胸中にて蓄積する。この内熱が肌肉を消耗させるようになる。…」これは『黄帝内経』の意訳抜粋ですが漢方ではその第一歩からすでに糖尿病に対する深い理解が見られます。
 多飲、多食、多尿がこの病の三大徴候と明示され、上焦・中焦・下焦の三焦に区分して病の発展経過を説明するようになるのは宋代以降です。

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